あー…まただ。共通テストの勉強しなきゃって分かってるのに…。校則もそうだけど、なんで世の中こんなに「~すべき」ってルールだらけなんだろう。正直、息苦しいよ。
哲ろうくん、「ルール(規範)」と「自分の欲望」のズレは、倫理学の根本的な悩みだ。西洋思想の土台である『旧約聖書』も、まさにその「ルール=神との契約」を巡る壮大な物語なんだ。今日は、なぜ我々に「~すべき」という考え方があるのか、その原点を探ってみよう。
本時のゴール
旧約聖書における「律法(ルール)」が、単なる束縛ではなく、共同体を維持するための「契約」であったことを理解し、現代の校則や社会規範の存在意義を説明できるようになる。
必修語句セクション
- 旧約聖書 (Old Testament): ユダヤ教の聖典。キリスト教においても聖典とされる。唯一神ヤハウェとイスラエルの民との「契約」が記されている。
- ヤハウェ (Yahweh): イスラエルの民を選び、導いた唯一絶対の神。
- 契約 (Covenant): 神と人間との間の約束。「律法を守ること」を条件に、神が民を祝福し救済するという関係性を示す。
- 律法 (Law / Torah): 神が人間に与えた「~すべし」「~すべからず」という戒め・ルール。代表例が「モーセの十戒」。
- モーセ (Moses): 神から「十戒」を授かり、民をエジプト脱出させた預言者。
- 預言者 (Prophet): 神の言葉(=預言)を預かる者。民が律法の「精神」を忘れ、形式的になった際に現れ、厳しく批判した。
概念図解(Webでは非表示)
【印刷専用】旧約聖書における神と民の関係
神(ヤハウェ) → [ 契約 ] ← イスラエルの民
↓(授ける)
律法(十戒)
(例:「殺すな」「盗むな」「偽証するな」)
↓
(民が律法を破り、形式化する)
↓
預言者(モーセ、イザヤなど)が登場
「ルールを守るだけでなく、心(精神)に立ち返れ!」と警告
自分ゴト化:もし「校則」が一切なかったら?
哲ろうくん は校則を「息苦しい」と感じているね。では、もし明日から校則が一切なくなったらどうなるだろう? 授業中にスマホの通知が鳴り響き、服装もバラバラで、誰もが自分の「やりたいこと」だけを優先したら、クラスという共同体は成り立つだろうか?
旧約聖書の「律法」も、これと似ている。エジプトで奴隷だった人々が解放され、自由になった時、彼らは荒野でバラバラになりかけた。そこで神は「十戒」(人を殺すな、盗むな、等)という最低限の「ルール(契約)」を与え、共同体を維持しようとしたんだ。ルールは、自由な人々が共存するための「ガイドライン」だったんだ。
理性モデルの実践:「なぜ、ルール(律法)は必要なのか?」
- 問い:なぜ神は、人間に「律法(ルール)」を与えたのか?
- 基準:ここでの「律法」を、「個人を縛るための束縛」ではなく、「共同体(社会)を崩壊から守り、秩序を維持するための『契約』」と定義する。
- 理由:人間は、自由を与えられると自分の欲望を優先してしまい、他者を傷つけたり、盗んだりする「弱さ」を持っているから。共同体が崩壊すれば、全員が不幸になる。そこで神は、人間が「善く生きる」ために最低限守べきガイドラインとして「律法」を与え、それを守ることを「契約」とした。
- 検証:哲ろうくんが「勉強すべき」というルール()を息苦しく感じても、心のどこかで「必要だ」と分かっているのは、それが将来の「なりたい自分」という善い状態に達するための「ガイドライン」だと(理性のどこかで)理解しているからだ。ルールは、我々が弱さに負けて道を踏み外さないための「道しるべ」でもあるんだ。
FAQ(よくある質問)
Q. 旧約聖書の神(ヤハウェ)は、ルールを破るとすぐ怒るイメージがあって怖いです。
A. 確かにヤハウェは「契約」を絶対視するため、ルール違反には非常に厳しい「裁き」を下します。しかし、旧約聖書は同時に、民が失敗しても「預言者」を送って警告したり、罰した後で必ず救いの手を差し伸べたりする「愛」の神としての一面も描いています。 Q. なぜキリスト教なのに「古い(旧)」契約と呼ぶのですか?
A. 素晴らしい質問です。それは、次回の授業で学ぶ「イエス・キリスト」が、「律法(ルール)を守ること」よりも大切な、新しい考え方(=新しい契約)を提示した、とキリスト教が考えたからです。だからイエス以前の契約を「旧約」と呼んでいます。次週、この「ルール」がどう問題視されたのかを見ていきます。
Exit Ticket
今日の学びを踏まえ、「ルール(律法)は、〇〇のために必要だ」という〇〇の部分を、あなた自身の言葉(20字程度)で埋めてみよう。
共通試験問題(チャレンジ)
Q. 旧約聖書における「律法」の意義と、それが「預言者」たちによってどのように批判的に継承されたかを説明しなさい。
(解答例)律法は、神とイスラエルの民との「契約」の証であり、共同体の秩序維持と信仰の規範としての意義を持っていた。しかし時代とともに、律法を守ること自体が目的化する形式主義が生まれた。預言者たちは、こうした形式主義を批判し、律法を遵守することの根底にあるべき神への愛や社会正義といった内面的な「精神」に立ち返るよう求めた。

